地球温暖化、自然破壊、環境汚染と、日を追うごとに、年を追うごとに深刻化している環境問題。世界では、先進国と新興国などが、京都議定書以降の削減をめぐり紛糾するなど、各国が自分の国の利益優先、国家戦略優先に走り、なかなか方向が定まらないが、地球上のすべての国、企業、人が協力して削減に努めなければならないのは明白だ。わたしたち日系企業は、タイで事業活動をさせていただいている以上、タイが進める環境プログラムに積極的に参加していくことは義務と言っても過言ではない。
今回は、タイ政府が進める環境関連のプログラムの特集。第1部では、温室効果ガス削減への取り組みを、第2部では、環境関連のアワードを紹介する。
(第1部) 温室効果ガス削減への取り組み
【1-1 カーボンラベル】
カーボンラベルの制度が始まったのは2008年。企業の温室効果ガス削減に対する取り組みを活発にさせることを目的に始まった。制度の運営・管理はタイ温室ガス管理機構(TGO)があたっている。
カーボンラベルを取得するには、温室効果ガスの排出量が2002年のレベルより10%以上削減されていることが要件となっている。同機構によると、通常、とりわけ先進国で行われている同様の制度では、「温室効果ガスの排出量」について、原材料の製造から、消費者が購入して廃棄するまでの「製品のライフサイクル」 すべてを対象に算出するよう定められているが、タイでは、まだそのレベルに達していないため、あくまでラベルを申請した製品の製造段階のみを対象にした算出にとどめられている。
TGOは、ラベル付与を認可する条件として、削減された数値だけでなく、(1)バイオ原料、あるいは廃棄物による発電システムを有していて、外部から購入する電力量は、製造工程で使用される総電力量の5%未満である(2)製造工程において化石燃料が使用されていない (3)製造工程で高い効率性を持った省エネ技術が使用されている——などの条件を満たしていることを求めている。TGOによると、ラベルは、応募企業から完全なデータを受理したあと、2ヵ月程度で発行される。今年は9社23製品がカーボンラベルを獲得した。
TGOは、カーボンラベルを取得した企業のメリットとして、(1)生産工程の効率化による生産コストの削減、および化石燃料の使用削減やエネルギーの循環利用の拡大 (2)企業の社会的責任を果たしていることのアピールになるとともに、企業のイメージアップになる——として、参加を呼びかけている。
現在、カーボンラベルのプロジェクトが抱えている問題は、企業、消費者の双方にその存在があまり認知されていないことだ。企業が努力してラベルを取得しても、社会的に認知されていなければ、盛り上がっていかない。TGOは、今後、企業に対する奨励と、消費者の認知度を上げていくため、広報活動を強化していく方針を打ち出している。
【1-2 カーボンフットプリント】
カーボンフットプリントは、もともと欧米で、個人の生活や企業の活動において排出される温室効果ガスの「足跡」を調査、把握することを目的に始まった活動。その後、とりわけ企業がその結果を製品などに表示していく制度へと発展していった。タイにおいても主に後者のことを「カーボンフットプリント」と呼んでいる。
「足跡」は、製品の原材料にまでさかのぼる。原料の採掘や栽培の段階から、製造・加工→包装→輸送と続き、消費者等がそれを購入して消費し、廃棄に至るまで対象となる。これらの各段階で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスの総合計(重量)が製品などに表示されることになる。つまり、この活動は、先述した「カーボンラベル」で、まだそのレベルに達していないとした部分にまで広げたもの、ということになる。
タイでこの導入および運営・管理にあたるのは「カーボルラベル」と同様、タイ温室ガス管理機構(TGO)。TGOはこの制度の意義を以下のように説明している。
地球温暖化の問題が、日増しに大きくなってくる中、カーボンフットプリントの制度が導入されれば、消費者は、消費者自身が取り組める地球温暖化対策として、「少しでも環境への影響の少ないもの」が、上位購入選択理由になってくる。消費者の関心の高まりは、企業活動、とりわけ温室効果ガス排出量の少ない製品の開発、あるいは原材料の選定にも反映されていく。それは、消費者と接点を持つ最終製品のメーカーだけにとどまらず、原材料メーカーにも波及していくことが期待できる。こうした活動に取り組む企業が拡大されれば、引いては国全体の、さらには地球全体の温室効果ガス排出抑制につながっていく。つまり、「足跡」を見つめる活動が、振り返れば、地球温暖化をストップさせる目標に向かって歩いていく道を示していることになる——。
しかし、表示していく「各段階において生じる温室効果ガス排出の総量」というのが、実に複雑で一筋縄ではいかない。そこでTGOは2009年、参加企業を募り、モデルケースとして進めていく方法を取ることを決めた。プロジェクトには、国立素材技術センター(MTEC)も加わり構築および参加企業への指導にあたる。また、TGOは今後のフットプリントの普及に向け、カーボンフットプリントの計算をアドバイスできる専門家の育成に着手する。フットプリントのラベルデザインは現段階ではまだ決まっていない。考案中だという。
フットプリントのモデル工場募集には、多数の企業が応募してきた。その中からTGOは下表の20社20製品を選んた。
(第2部) 環境関連のアワード
【2-1 Thailand Energy Awards】
「Thailand Energy Awards」は、エネルギー省が省エネとエネルギーの代替化を促進させるための施策の一つとして2000年にスタートさせ、2002年に代替エネルギー賞が加わって現在の形になった。
この賞は、(1)代替エネルギー開発と省エネにおいて優れた成果を上げた企業を称える (2)代替エネルギー開発と省エネに関する優れた成功事例の普及を図る (3)代替エネルギー開発や省エネ意識を啓発する (4)タイの代替エネルギー開発と省エネに関する優れた事例をASEAN(東南アジア諸国連合)のコンテストへノミネートする——を目的に毎年開かれている。
賞は、省エネ部門と代替エネルギー部門に分かれている。下の表にあるように、省エネ部門は3カテゴリー9タイプ。ダイタイエネルギーは3カテゴリーからなる。
選考基準にあたっては、省エネ部門の場合、工場、ビル(新築・改善済みビルを除く)ともに、省エネ奨励法の提供対象、対象外を問わず環境に対する影響、安定性、普遍性、創造性、全体説明と効果が、新築・改善済みビルは、総合建築設計、省エネ達成度、パッシブデザイン、アクティブデザイン、保守管理、環境に対する影響がそれぞれポイントとなる。
一方、代替エネルギー開発部門の場合、「再生エネルギー」については、売電有り、無しを問わず、創造性、環境・社会への配慮、技術性・経済性・市場性、プロジェクトの実施と維持管理に関する計画、プロジェクトに関するプレゼンテーションなどが、バイオマス発電は、技術性、商業化の可能性、環境・社会・国家への貢献度などがそれぞれポイントなる。
今年は、省エネ部門は合計19の企業や個人が、代替エネルギー部門は5つの企業が表彰された。このうち、省エネ部門の工場カテゴリーでの受賞者は以下の通り。
●「省エネ奨励法対象」とは、1992年省エネ奨励法の適用対象となることをいい、1175KVAを超えるトランスが取り付けられている、または1000キロワットを超える電力計が取り付けられている、もしくは年間の使用熱量が2000万メガジュールを超える、の要件を満たしている工場を指す。●「新築ビル等」は、建築後5年未満、および省エネ改善により20%以上の低減に成功した建築後5年以上の建物をいう。● 代替エネルギー部門における「再生エネルギー」とは、太陽光発電、風力発電、太陽熱などをいう。
【2-2 生態系保護・ビジネスアワード】
天然資源・環境省が今年、環境保護に関する新たなコンテストとして「生態系保護に関するビジネスアワード」をスタートさせた。
このコンテストでは、自然の中にある多種多様な生態系を守り、蘇(そ)生・繁殖させていくことを目的とし、(1)森林における生態系の保護活動 (2) 生態系保護に関する教育や啓発活動 (3)自然蘇生活動 (4)生態系保護への諸支援・促進——の4部門が設けられた。これらの対象となるのは、あくまで企業が本来の企業活動を離れて行っている取り組みに限られている。
同省は、こうした優秀な取り組みを表彰して、称えるだけでなく、コンテストやこのような企業活動を広報することで、活動の輪がさらに広がっていくことを期待している。
今年は第1回ということもあり、主催者側が100社を選んでコンテストへの参加を呼びかけ、9つの団体・企業から合計18のプロジェクトの応募があった。同省は有識者による選考委員会を設置し、審査を一任した。
その結果、(1)森林における生態系の保護活動では、トヨタモータータイランド株式会社のビオトープ開設活動 (2)生態系保護に関する教育や啓発活動は、該当なし (3)自然蘇生活動は、首都圏電力公社の「首都圏のマングローブ保護プロジェクト」(4)生態系保護への諸支援・促進は、ラーチャブリー発電ホールディング株式会社のプロジェクト「人は森を愛し、森は人を愛する」と、サイアム・フォレストリー株式会社のプロジェクト「森の人々を支援する」——がそれぞれ選ばれたほか、PTT株式会社とジャルーン・ポカパン株式会社に特別賞が贈られた。
(取材 : Plus One Siam 小川隆紀)









