今回は、3回目のコラムで少しだけ触れた、あるお客様のところで起きたケースの話です。
このお客様は昨年7月に弊社が8台の防犯カメラの設置を承りましたが、その数ヵ月後、従業員による製品の不正持出しが発覚しました。
この工場は、毎週日曜日は休業日で、警備員を除き原則誰も出社して来ません。ところが、ある休み明け月曜日の録画機のイベントリポートのチェックの際に、前日の日曜日の朝から昼前までの時間帯に、電源ダウンによる不自然な録画ストップの記録が見つかりました。不審に思いその時間帯の前後の記録画像をくわしく調べてみると、電源ダウン直前と電源復帰直後では、倉庫の中で整然と積み上げられていた製品ストックの高さが明らかに違っている(減っている)ことが確認されたのです。さらに同時間帯の他のカメラの録画映像もくわしくチェックしていくと、警備員以外誰もいないはずの工場で、主電源室の方向に足早に向かう3つの人影が小さく映っていました。その後まもなく、録画映像は電源ダウンで約一時間のあいだ途切れてしまいます。実は、初回の8台(現在は12台)のカメラ設置の際、お客様の強いご意向で、正門には警備員が常駐しているという理由から工場奥と両サイドに重点を置いたカメラ配置とし、正面の入口エリアの監視を薄くしていました。今回はこれが災いし、肝心な正門付近や駐車場の映像が得られなかったのです。工場敷地の一番奥に取付けたカメラからかろうじて映っていた電源室へ向かう人影は非常に小さく、人物を特定するのは困難でした。
「何か他に手がかりが残っていないか…。」弊社も加わり、しばらく思案して気が付いたのは、「前の通りをはさんだ向かい側に他社の大きな工場があり、そこが通りに沿って設置したカメラが数台ある。もしやその日時に犯人が車で通ったところが映っているのではないか?」 さっそく先方に事情を話し協力をお願いしたところ、快く防犯システムの録画データを見せてくれました。すると該当する日時ぴったりに、従業員の個人所有の車が往来する様子がバッチリと、帰りなどはトランクに重量のあるもの(製品)を積んだため、後部が異様に下がって重そうに走行している様子まで生々しく映っていました。
その後の調べで被害額はおよそ20万バーツ。犯人はドライバー2名と警備員であることが判りました。3名は翌日(月曜日)には平常通り、何食わぬ顔で出勤して来ていましたが、調べが進むにつれ、自分たちに疑いがかかっていることを察知したのか、週の途中のある日から突然来なくなりました。勿論連絡もとれません。しかし車の出入りの画像が決め手となり、当初腰が重かった警察が、本格的な捜査に着手、主犯のドライバーは数ヵ月後に故郷で逮捕されました。
警備会社側も責任を認め、損害額の半分(警備員は主犯ではないため) の補償を承諾しました。
よく、「ガードマンも怪しい」という声を聞きますが、まさに今回のケースは、日曜日の白昼、堂々と車を乗りつけ、警備員の協力のもとにやすやすと正門を通過し、コピーした倉庫の合鍵を使って製品を持ち出すという呆れた犯行だったのです。さらにその後の調べで、スタッフの中には、このような不正を知っていたにもかかわらず、脅されて口をつぐんでいた者がいたことも明らかになり、カメラを付ける以前にも同じ不正が継続的に行われていた疑いも出てきました。
録画機に記録される小さなイベントもよく分析すると不審な動きや手がかりが見つかることがあります。やはり日々の運用が重要ということです。それとカメラの設置位置、そしていざと言うときのためにもお隣さんと仲良くしておくことも。さまざまな教訓が得られた事件でした。
著者 : 大川戸 博 (EVER QUEST Co., Ltd. 代表・防犯設備士)
EVER QUEST Co., Ltd.
52/225 Moo13, Kwaeng Sapansung, Khet Sapansung, Bangkok 10250
Tel : 02-736-0371
Fax : 02-736-0374
http://www.everquest.biz



